前ページ 営業の辛さときつさと心の守り方 社内編
お客様に本当のことを言えないストレス
企業は、当たり前のように「顧客第一主義(クライアントファースト)」を謳っています。「第一」って何と比べてるの?って話です。
営利企業の経営陣は、株主(会社の持主)の利益を第一に考え、健全な企業ならば、次に従業員の生活の安定を考えます。お客様はその後なのです。従業員よりもお客様を優先していたら、それはブラック企業です。
しかし顧客第一を謳ってしまっているため、お客様と直接接する営業の現場には歪みが生じます。
販売する商品は、お客様よりも自社の都合が優先されます。「○○キャンペーン」とか「お勧め商品」などは、まさに会社の売りたい商品です。
本心から1番良いと思って勧められる商品はあまりありません。自社製品の中で1番良いものはそれぞれのカテゴリで1つ、競合他社とも比べたらほとんどないのではないでしょうか。
それでも営業マンは「この商品が1番です」と言って勧めなければなりません。
業界トップクラスの企業が数百億円を掛けて研究開発している商品を、自社は数十億円で開発している。その時点で1番良いと思える商品を販売出来る機会は殆んどないでしょう。
では、業界トップクラスの企業の営業マンは楽なのでしょうか。もちろん違います。下位クラスの企業の営業マンよりも大変です。
シェアを守り巨額の研究開発費を稼ぐために、必ずしも必要とは言えない買換を勧めなければならないし、お客様にとって過大とも言える数量を勧めなければならない事もあります。
職場にもよりますが、本音だけではやっていけないというか、本音でやっていける機会は殆んどないというのが現状でしょう。
本音でやっていける機会を増やしたければ、頑張ってお客様を増やす事です。割当てられるマスト商品の数量は決まっているため、お客様が増えれば自分の勧めたいものを勧められる比率も高まります。
既存顧客との間に生まれるストレス
既存のお客様との間に生まれるストレスは、実はかなりコントロール出来るストレスです。
お客様とのストレスの多くは、こちらの「商品を勧める」という行為から生まれます。お勧めする頻度を下げるとか、後々問題にならないような勧め方をするとか、ストレスをコントロールする方法はいくらでもあります。ノルマが無ければ。
ノルマがあるんです。だから先週他の商品を買ってもらったばかりのお客様にも、前回もっともな理由でお断わりになったお客様にも、今回もまた商品を提案しに行くのです。
「断られて当たり前」。場合によっては「お客様を怒らせてしまうのではないか」という提案をしなければならないのはストレスです。
「提案しなければ良いではないか」と思うかも知れませんが、腕の良い営業マンはそういうお客様とも良好な関係を築き、成約を取って来るのです。それを基準に上司から「出来るだろ」と言われて「出来ません」とは言えないのです。
しかしスキルがないため、アプローチすると悪い方の結果になってしまいます。
この状況を打破するためには、質の高いアプローチを身に付ける必要があります。そして、もう1つ、アプローチ出来るお客様の数を増やす事です。
トラブル客やクレーマー
お客様の中にはトラブル客とかクレーマーと言われる顧客もいます。営業マンは、時間と数字に追われています。その中で、約定する見込みのまったくない顧客に、2時間も3時間対応するのは大きなストレスです。
クレーマー
わかっていれば絶対に手を出さない顧客なのですが、そういう顧客に限って、話は聞いてくれるんです!そして、場合によったら約定もしてくれます。
証券営業の話になりますが、証券会社の商品は、購入後に値上がりしたり値下がりしたりします。
クレーマーは少しでも値下がりしようものなら頻繁に説明を求めてきます。そして、お決まりの言った言わないのお話になります。そして、無かった事にしろという要求を粘り強くしてくるのですが、正直、そのバイタリティーがあったら普通に商売をしたら成功するんじゃないかとさえ思います。
トラブル客
トラブル客は、顧客が一方的に悪ければ突っぱねられますが、営業サイドに非があってトラブルになっている場合もあります。引き継いだお客様などで、その辺の認識を間違うと大変な事になります。
因みに、IP電話が導入された頃から会話は全部サーバーに録音されている会社もあります。公表している訳でも隠している訳でもないのですが、特にお客様には知らせていません。防犯カメラと同じような感覚でしょうか。知られたら「聞かせろ」とか「個人情報が・・・」とか言ってくるお客様も多そうです。もちろん法的に問題はありません。
キャンセル客
トラブルではないのですが、キャンセルを頻繁にしてくるお客様がいらっしゃいます。営業マンにとっては恐怖の存在です。
キャンセルはお客様の権利ではありますが、キャンセルされた商品はもう一度販売しなおさなければならなくなります。キャンセル癖のあるお客様には、「この商品はキャンセルしないで下さいね」と念を押しますが、効果のないお客様もいらっしゃいます。
「本部に返せば良いだろう」とか、「再販するのは購入するお客様に失礼だ」等と思うかも知れません。私も商品によってはそう思います。
しかし、これをお咎めなしに許してしまうと、キャンセルを装おって販売したくない商品の販売を逃れようとする営業マンが大量に出てきます。営業マンのモラルはそれほど高くはなく、加えてノルマに追われています。
キャンセルは販売期日が迫っていたり、数量が多かったりすると1人では捌ききれず、同僚に迷惑を掛ける事になります。同僚の立場でも、やっと終らせたはずの商品が復活してくるのはうんざりします。
新規開拓はストレスの塊
飛び込み営業も電話営業も、新規開拓はひたすら断られ続ける仕事です。時に罵倒もされ、刺すような言葉も浴びながら。
100人のお客様に10回づつアプローチしても、顧客になるのは10件に満たないでしょう。
飛び込み営業
飛び込み営業は、真夏の暑い日は汗だくになりながら、真冬の寒い日もコートやマフラーを着て玄関前に立つ訳にはいきません。震えながら。
カバンには数十件分のチラシと、話が進んだ時のための販売用資料など、くそ重たい資料が入っています。
体育会系を進んで採用する理由がわかります。真夏に連日グラウンドを走り回った経験が活かされます。
体力的に削られながら、断られ続けてメンタルも同時に削られていきます。
電話営業
電話営業は楽なのでしょうか。体力的には楽ですが、アプローチ件数は、飛び込み営業よりも遥かに多くなります。
家と家との間の移動時間もなく、上司も近くにいるため気を抜く事もままなりません。メンタルはより削られます。
「結構です!」という言葉が耳にこびりつきますし、「結構です」の言い方で、見込みがあるかないか検証し始めます。
新規開拓はそもそも法令が許さない?
体力とメンタルだけではありません。
現代は法令順守が当たり前になり、弁護士や裁判がかなり身近になっています。勧誘している動画や音声を取られてネットに配信されるなどというリスクもあります。
そんな中、「これを言われたら新規開拓は不可能」と思える法令があります。
特定商取引法の「再勧誘の禁止」です。
内容は、「業者は一度商品購入を断った消費者を再び勧誘してはいけない」というものです。
新規開拓だけではありませんが、特に新規開拓には影響の大きい法令です。
普通、見知らぬ誰かに高額商品を勧められたら、取り敢えず断ります。その後も断り続けながら営業マンと顔見知りになっていき、商品を調べ、会社を調べ、「信じられる」となって約定に到ります。
「一度断られて再勧誘したら法令違反」と言われたらなす術がありません。
実際には、顧客からこの法令を言い出されない限り勧誘を続けるのですが、心に「法令違反で咎められるかも知れない」という気持ちを抱えながら働くのは、かなりの精神的負担です。
-
-
① 営業の辛さときつさと心の守り方 社内編
営業現場は、大人が普通に叱責、罵倒される世界です。特効薬は成績を上げる事です。出来ないのならば愚痴を言い合える愚痴仲間を作る事です。執拗に追い込まれたら、営業で出来る工夫は、シンプルに①誰に②何を③どう販売するの3つです。